アラームは多ければいいってもんじゃない

📓保全ノウハウ📓

アラームが鳴る → 確認する → 対処する

これが本来の流れです。

でも、1日に数百件のアラームが出る工場で、この流れがまともに回っているところをワイは見たことがありません。

夜間の当番中、故障で呼ばれた設備のHMI画面にアラームが20件並んでいる。

ほーん、いつものやつね、ほーん🥱

意味のないアラームを繰り返し見たり聞いたりしていると、
人は確認に行かなくなります。

当然です。全部に対応していたら、それだけで勤務時間が終わりますし。

問題なのは、その確認に行かなくなったタイミングで本当に止まるアラームが混ざっていたときです。もはやオオカミ少年。

でも出ていた一日何十件も出る警報のうちの1件を拾えないというのは、
仕組みの問題であって、人の問題ではありません 🏭


なぜ「多い」と「止まる」がつながるのか

アラームの本来の役割は今すぐ人が判断・行動すべきことを伝えることです。

DCSの監視画面でもPLCの異常表示でも設計思想は同じで、
アラーム1件につき人が1つ判断するのが前提の仕組みです。

でも実際に鳴っているアラームの中身を見ると、こんなものが混ざっています。

  • 既知の異常が繰り返し出ている(原因は分かっているが根本対策が打たれていない)
  • しきい値の設定がタイトすぎて、正常運転でも引っかかる
  • 設備を改造・撤去した後もアラーム設定だけ残っている
  • 「一応入れておこう」で追加されたまま、誰も見直していない

こういうアラームが全体の8割、9割を占めている工場は珍しくありません。
全部に対応するのは物理的に不可能です。

結果、現場の判断は「見ない」になります。
見ないというより、見ないという判断をせざるを得なくなる。

これがいわゆるアラーム疲れ(alarm fatigue)です。
こんな言葉があるのも意外ですが、割と有名なようです。

そしてもう一つ致命的な問題があります。

すべてのアラームが同じ優先度で鳴っていることです。

設備停止に直結するアラームも、対応不要の通知も、同じ音、同じ表示、同じリストに並ぶ。どれが重要かを判断する材料がない。

警報が設定された当初(特に建設時)は重要だと思われたが、
いざ運用してみると使われないものが多く、なのに修正がされない、などといった理由により残っているものが多いのです。

止まる前に止められたはずの故障を見逃す。
その原因は監視していなかったことではなく、「監視の仕組みが機能していなかった」ことです。

またここで見落としがちなのは、アラーム放置の結果起きる突発停止が「ライン停止損失」として会社に跳ね返ることです。

1回の停止で数十万〜数百万円のライン損失、復旧の人件費、納期遅延のペナルティ。それが年に何回も起きている。

でも、アラームが多すぎたせいで止まったとは記録されない。

故障記録には「軸受焼損」「モータ過負荷」としか残らないから、アラームの問題として上がってこない。もちろん上層部にも届かない 📊

アラームが多い工場ほど止まる、という構造はそんな感じです。


アラームが増える原因

アラームは勝手に増えません。増える原因は大きく3つに分けられます。

原因1:運用に合わせて整理されていない

先ほども述べましたが、「あんま重要じゃねぇから無視だわ」みたいな警報が、運用の途中から出てきます。
何だったら建設当初からあったりもします。

しかし、「なきゃ困る警報」の追加対応は早いですが、
「あっても困りはしない警報」への修正対応は遅いです。

気にかけてくれる現場のオペレーター、そしてその要望に真摯に答えるエンジニアという2者がいないと成り立ちませんが、
どうしても対応の優先順位が下がってしまうのでなかなか整理されないのが現状です。

原因2:しきい値が現実に合っていない

古い設備でよくある印象で、
アラームというよりアラームが出る条件の問題なのですが、
導入時に設定されたしきい値がそのまま残ったりしています。

設備のコンディションは経年で変わるし、運転条件も変わる。
なのにアラームのしきい値だけが数年前の設計時の基準で動いている。

結果、正常運転なのにアラームが鳴る。

あるいは、本来なら警報を出すべき値でも鳴らない。どちらにしても「アラームが鳴った=行動すべき」という前提が崩れます。

しきい値がズレたアラームを毎日見て、それでも対応し続ける現場はあまりありません。

合理的な人間ほど、先に「見ない」を選びます。

原因3:「入れておけば安心」で追加される

「何を監視して、どうなったら誰がどう動くべきか」が曖昧なまま、アラームだけが追加されるパターン。

「一応見てた方がいいから」「何かあったとき困るから」

気持ちは分かりますが、対応手順が定義されていないアラームは鳴るだけで誰も動かないものになります。

監視項目を追加すること自体は悪くありません。

問題は「鳴ったら何をするか」がセットになっていないことです。

行動に繋がらないアラームは、ノイズと同じです。

整流化の第一歩は「分けること」

アラームを減らすというと「監視を減らすのか、危なくないか」という反応が出ます。

でもやることは「監視をやめる」ではなく「分ける」です。

あくまで一例ですが、すべてのアラームを3つに分類するのも有効です。

  • A:人がすぐ判断・行動すべきアラーム(設備停止や安全に関わるもの。鳴ったら即対応)
  • B:記録としては残すが、即時対応は不要な通知(トレンド監視やログ目的のもの)
  • C:現時点で出ている意味がないアラーム(既知の事象、対応済み、設定ミス、撤去済み設備の残骸)

まずCを潰すだけで、アラームの件数は大幅に減ります。
→Cがなくなれば、AとBの区別がつきやすくなる。
 →画面に並ぶアラームの中に本当に対応すべきものが見えるようになる。

最初の一歩は、1週間分のアラームログを出して、Cに該当するものを洗い出すことです。

DCSのヒストリアンでもPLCの異常ログでも、記録さえ残っていれば集計できます。

「このアラーム、過去1週間で何回鳴ったか」「そのうち何回、人が動いたか」

感覚だけでも、この2つの数字を出すだけでCの候補は見えてきます。


まとめ

アラームの問題は数ではなく質です。

1,000件のアラームを100件に減らす必要はありません。

まず「意味がないアラーム」を1つ見つけるところから始める。
1週間分のログを出して、Cに該当するものをリストアップする。

対策の手前、整理の手前の分けることが第一歩です。

アラームが機能している工場は、アラームが少ない。
少ないから1件1件に対応できる。
対応できるから止まる前に止められる。
止まらないから突発停止のライン損失が減る。

この循環を作るために、まずログを見るところから始めてみてください 🔧


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