絶縁抵抗計(メガ)を当てて、値が高ければOK、低ければNG。
シンプルで分かりやすい判断に見えます。
確かに数十MΩ出てトラブルになることはそうそうありませんが、
古い設備等で悪く出がちな環境の場合、直近測った値だけで良い・悪いを決めるのは危険なときがあります。
※ちなみに弊現場ではもうすぐ停止となる古い搬送ラインのモーターが毎回数十Ωしか出ておらず、測定のたびに「ちょwまた10Ωしかでてないんだけどwww」ってやりとりが恒例になってます。笑いごとではありませんね。。。
基準を超えていても安心できない場面がありますし、測り方を間違えれば測定そのもので機器を壊すこともあります。
この記事では、メガの値を正しく読むために押さえておくべき3つのポイントを整理します 🔧
理由1:絶縁は「今の値」より「変化」で見るもの
電気設備技術基準では、低圧回路の絶縁抵抗の最低値が定められています。
使用電圧300V以下で、対地電圧150V以下 → 0.1MΩ
使用電圧300V以下で、対地電圧150V超 → 0.2MΩ
使用電圧300V超 → 0.4MΩ
この基準を超えていれば法的にはセーフです。
でも、基準をクリアしていれば安心かというと、そうではありません。
たとえば前回の測定で100MΩだった回路が、今回10MΩになっていたとします。0.2MΩの基準からすれば十分すぎる値です。
しかし前回の1/10に下がっている状況。これは劣化等の何らかの環境悪化があるサインと言えます。
100MΩ → 10MΩ → 1MΩ → 0.5MΩ → 地絡。
こういうトレンドが見えていれば、次の点検までにケーブル引き替えの計画を立てようという判断ができます。
0.5MΩまで落ちてから慌てて対応するのとでは、段取りの余裕がまったく違います。
逆に言えば、過去の値がなければ良い/悪いは判断できません。
今回の数字だけを見て「10MΩあるから大丈夫」と言ってしまうと、劣化傾向を見逃します。
絶縁抵抗の判断は、前回・前々回の値と並べて見るのが鉄則です 📋
理由2:温度と湿度で値が変わる
絶縁抵抗は測定条件に左右されます。特に影響が大きいのが温度と湿度です。
夏場の高温多湿の環境では、絶縁材料が吸湿して抵抗値が低く出ます。
同じケーブル、同じ回路でも、冬に測れば50MΩ、夏に測れば10MΩ、ということは普通に起きます。
ここで注意が必要なのは、トレンド比較です。
前回(冬)50MΩ → 今回(夏)10MΩ。「1/5に下がった、劣化だ」と判断したくなります。でもこれは季節の影響で値が下がっただけで、劣化とは限りません。
トレンドで比較するなら、同じ時期の値と比べるのが原則です。今年の夏と去年の夏、今年の冬と去年の冬。時期を揃えれば、条件の違いによる誤差を減らせます。
もう一つの方法は、測定時の温度と湿度を記録しておくことです。
「30℃・湿度80%で10MΩ」と「5℃・湿度30%で50MΩ」では、条件が違いすぎて単純比較ができません。逆に、条件が記録されていれば「この差は条件の違いで説明がつく」という判断ができます。
値だけ記録して条件を残していないと、トレンド分析の精度が落ちます 🌡️
理由3:古い設備で使う場合
メガには印加電圧の設定があります。工場でよく使うものとしては1000V、2500V、5000Vのレンジのものでしょうか。
古い設備で印加電圧の選択は要注意です。計器類が壊れます。
以下ワイが実際に見た事例ですが、高圧ケーブルの絶縁抵抗測定で、2.5kV(2500V)のレンジでメガを使ったときのこと。
回路は昔の溶解炉用で、直流1kVでした。
一般的な電気品の絶縁抵抗を測定する場合の推奨測定電圧については、
JIS C 1302で定められていますので、機器の定格電圧を確認して測定するのですが、大体どのレンジでも定格よりも高く設定されています。
ただ設備がいかんせん古かったので、計器類が軒並み壊れました。
そんな劣化した状態で使うなって言ってしまえばそれまでなのですが、やむを得ず使用したい場合もあるかと思います。
メガを当てる前に確認すべきことは3つです。
- 回路が無電圧になっているか(電源を切り、残留電圧を放電しているか)
- 耐電圧の低い機器(計器、電子機器、制御基板など)が回路に繋がっていないか
- 印加電圧は測定する回路の電圧区分に合っているか
- 測定対象の回路は古すぎないか
特に2番目は見落としやすいポイントです。
高圧回路でメガを当てるとき、回路の先にCT(変流器:電流を計測するためのセンサ)の二次側に繋がった計器がいることを忘れると事故ります 🔌
記録に残すべき4つの情報
メガの測定結果を使える記録として残すには、値だけでは足りません。
最低限、以下の4点を残します。
- 測定日(いつ測ったか)
- 測定値(何MΩだったか)
- 印加電圧(何Vで測ったか)
- 測定条件(天候、温度・湿度、切り離した機器の有無)
特に4番目の「測定条件」は省略されがちですが、これがないとトレンド比較の精度が落ちます。
同じ回路の値でも、条件が違えば値は変わるので、その条件の違いを記録しておかなければ、後から見たときに劣化なのか条件差なのかが分からなくなります。
まとめ
メガの値を信頼できるものにするための原則は3つです。
- トレンドで見る(今回の値だけで判断しない。前回・前々回と比較する)
- 条件を揃える(同じ時期の値と比較する。温湿度を記録する)
- 回路を確認してから当てる(無電圧確認、耐圧の低い機器の切り離し、印加電圧の選択)
この3つを押さえるだけで、メガの値の信頼度はまったく変わります。
逆に言えば、この3つを無視して「値が高いから大丈夫」と言っている状態は、根拠のない安心です。
測定は当てて終わりではなく、比較できる形で残すところまでがセットです 🔧
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