「あの人」がいないと回らない状態を放置するとどうなるか

🖊チームマネジメント🖊

ご安全に!まんぬです👷‍♂️⚡

「あの人がいれば大丈夫」

褒め言葉ですよね。

昔中日にいた岩瀬は、「岩瀬が抑えで出てくれば大丈夫」って言われてしんどかったみたいですが、基本うれしいですよね。

わかりにくくてすんません。まあワイもそう思っていた時期がありました。

あだ、「あの人」が有給を取った日、現場が凍りました。

電話は鳴り、設備は止まる。誰に聞いても「あの人なら分かるんですけど……」

事務所に漂う絶望感、経験したことありませんか😨

あの人は何も悪くないです。

名前を言ってはいけないあの人でもありません。

むしろ、あの人が一番がんばってくれています。

問題は、あの人がいないと回らないのを放置しているチームの構造のほうです。

この記事では、あの人がいないと回らない現象を放置するとどうなるかを整理します。

さらに、属人化とは別のもう1つの罠──「あの人が優秀すぎて回せてしまっている」問題──も合わせて扱います。

「あの人」に何が集中しているのか 🔍

まず、「あの人がいないと困る」の中身を分解してみます。

「あの人」の頭の中に入っているものの例としては、

  • 技術的な知見(この型式のインバータはここが弱い、等)
  • 設備の履歴(あの設備は3年前にこう壊れた、あの部品は生産終了している)
  • メーカーとの関係(担当者名、連絡先、過去のやり取りの経緯)
  • 過去の対応経験(「これ前にも見た」と言えるのはあの人だけ)

全部、あの人の頭の中にしかありません。

紙にもExcelにも残っていない。共有フォルダにもない。

保存先:あの人の海馬。バックアップ:なし😇

あの人がいる日は回ります。電話1本で的確な判断が返ってきます。

あの人がいない日は詰みます。メーカーに電話しようにも連絡先が分からない。

設備の履歴を調べようにも、記録がどこにもない。

設備保全で言えば、これはシングルポイント障害(1箇所の故障でシステム全体が止まる構造)と同じです。

チームの可用性(稼働し続ける能力)が、1人の出勤状況に依存している。

冗長性ゼロ。予備機なし。

設備でこの構成を見たら危ないと言うはずです。

チームも同じです。

放置するとどうなるか ── 3つの崩壊パターン 💥

「まあ、あの人いるし大丈夫でしょ」とタカをくくって放置するとどうなるか。

崩壊の仕方は3パターンあります。

どれも笑えません。

① あの人が異動・退職した瞬間に全部消える

一番分かりやすいパターンです。

あの人が異動になった。退職した。

その瞬間、10年分の技術知見・設備履歴・メーカーとの関係が全部消えます。

「引き継ぎ期間があるから大丈夫」と思うかもしれません。

甘いです。

マニュアルに書ける情報は引き継げます。手順書に落とせる知識も渡せます。

一方で、

「この設備、夏場に湿度が上がるとここがおかしくなる」

「このメーカーの担当は○○さんに繋ぐと話が早い」

「この部品はもう型落ちだから在庫を持っておいたほうがいい」

──こういう経験ベースの知見は、引き継ぎ資料では渡せません。

10年分の経験値が、1日でゼロになります。

リセットボタン押され、タイムリープの始まりです😇

いっけぇええええええええ!!!!!!

② あの人が体調を崩しただけでラインの復旧が遅れる

異動や退職みたいな大きい話じゃなくても影響は出ます。

たとえば、風邪で1週間休んだだけで、現場がしんどくなります。

故障が起きたとき、「あの人に聞けば分かるのに」が口癖になっている現場、ありませんか。

言いたくなった時点で黄信号です。

たとえば、あの人が有給を取った日に設備が故障で止まったとします。

あの人がいれば30分で復旧できる故障が、あの人がいないと原因調査に2時間かかる。

メーカーに電話するにも、あの人がいつも連絡している担当者名が分からない。

型式を調べるのに図面を探す。図面や資料がどこにあるかも分からない。

復旧が3時間遅れたら、その3時間分の生産ロスが発生します。

ラインの時間あたり生産額が100万円なら、3時間で300万円です。

あの人が有給を取っただけで300万円の損失リスクが発生する構造。

有給を取る権利がある人に休まないでくれとは言えません。
(弊職場では日常茶飯事ですが)

③ あの人に負荷が集中して、本人が潰れる

これが一番見落とされるパターンです。

「あの人がいないと困る」の裏返しは、「あの人に全部いくです。

突発対応。メーカー対応。若手からの質問。設備履歴の確認。全部あの人に集中します。

あの人、過負荷トリップしてます。

サーマルリレーなら「あんた4ぬわよ!」って警告が出てる状態です。

でも人間にはトリップ機能がありません。過負荷でも止まれない。止まったら現場が止まるから、無理して回し続ける。

結果、チームを守るために一番がんばっている人が、一番先に壊れます。

この構造は本当に危険です。

「あの人がいないと回らない」は、あの人を褒めている言葉ではありません。

あの人を壊しにかかっている構造の名前です。

属人化とは違う、もう1つの罠 ⚠️

ここまでは知識や経験が共有されていないという属人化の話でした。

でもそれとは別のパターンがあります。

「あの人」が “ガチで優秀” なケースです。

仕事が速い。効率がいい。判断も的確。

突発が来ても冷静に切り分けて、最短ルートで復旧させる。

だからその人が1人で回せてしまう。

知識が共有されていないのではなく、能力が高すぎて1人で回せてしまっている。

属人化とは質が違う問題です。

問題は、その人の能力ベースでチームの人数が構成されてしまうことです。

上から見ると、回ってるから人数足りてると認識されてしまうこともあります。

当然です。数字上は回っています。突発対応も間に合っている。定期点検も消化できている。

でもその「回ってる」は、あの人が優秀だから回っているだけです。

標準的な能力の人が来ても、同じようには回せません。

あの人が抜けた瞬間、「人数は同じなのに回らない」現象が起きます。

頭数だけじゃなくて、メンバーの質を考慮してくれる上司、組織であればその後の人員構成も考慮してくれるとは思いますが、

「えっ、人数変わってないですよね?」とみられてしまうことも多いのではないでしょうか。

そうなんです。変わってはいません。ただあの人の処理能力は標準の2倍ありました。

2人分の仕事を1人でやっていたんです。その2.0が1.0に戻っただけで、1.0人分の仕事があふれます。

これは属人化ではありません。チーム設計が個人の能力に依存している問題です。

優秀な人を基準にチームを設計すると、その人が抜けた瞬間に設計が破綻します。

設備の設計で例えるなら、「ある電気品がが定格の200%で使われている前提」で回路を組んだら、部品交換した瞬間に容量不足で落ちます。

人も同じです😇

「あの人がいなくても回る」状態を作るためにできること 🔧

ここまで読んでうちのことだと思った方、安心してください。

全部を一気に壊す必要はありません。1つずつ外に出していけば大丈夫です。

あの人の頭の中にしかないものを外に出す

まず、あの人の海馬に保存されているデータを外部ストレージに移します。

そして故障対応の記録を残しましょう。

「いつ、どの設備が、どう壊れて、何をしたら直ったか」をExcelでもいいから残します。

記録の残し方については、こちらの記事で具体的に整理しています。

👉 Excelの故障記録を”分析できる形”に変える

そして手順を書き出します。「あの人しかできない作業」の手順を、あの人に書いてもらいましょう。

完璧じゃなくていい、70%の精度でいいから文字にする。

手順の型をどう作るかは、こちらの記事で詳しく書いています。

👉 教育はOJTじゃない:「見て覚えろ」で5年ロスした話

そして、2人目を育てる。

完璧にできる2人目じゃなくていいです。70%できる人がもう1人いるだけで、状況は全然変わります。

具体的には、あの人の横に若手をつけて、まず「見る」だけでいいから一緒に対応させる。

次に、あの人が横にいる状態で実際に手を動かさせる。最後に、あの人がいなくても対応できるか試す。

この3ステップを、あの人がよく対応する業務の上位3つでやるだけで十分です。

シングルポイント障害が解消されるだけで、チームの可用性は劇的に上がります。

100%の人が1人より、70%の人が2人いるほうが、チームとしては強いです。

優秀な人ベースで人数を決めない

チームの人数は「標準的な能力の人が回せる体制」を基準にするべきです。

優秀な人がいるなら、その人は「余力」になります。

余力がある状態が正常です。

優秀な人がフル稼働しないと回らない状態は、すでに人数が足りていません。

設備で言えば、定格の100%で常時運転している状態です。突発負荷が来たら即トリップです。

「あの人が頑張ってくれてるから回ってる」は、「設備が定格超えで動いてるから生産できてる」と同じです。

それ、褒めてる場合じゃないです😨

リーダーの立場なら、上にこう伝える必要があります。

「現在の体制はあの人の能力に依存して成立しています。あの人が抜けた場合、復旧時間の遅延で年間○百万円の生産ロスリスクがあります。標準的な人員構成で回すには○人必要です」。

理想的なことを言えば、必要な仕事を洗い出し、それぞれにかかる必要な工数を出し、さらにはそれを処理するメンバーの能力を記録することです。

「回ってるでしょ」と言われたら、「あの人が抜けたら回りません。復旧時間がこれだけ伸びて、生産ロスがこれだけ出ます」と数字で返せるのが理想です。

「忙しいです、しんどいです、ぴえーん」では上には通りません。

「あの人への依存度がこの水準で、抜けた場合のリスクがこの金額です」までいえて初めて上に響きます。

現場の危機感を、経営に通じる言葉にする。これが設備保全総合職に求められる仕事です。

次に読む記事 📝

「見て覚えろ」で型を渡さないまま5年ロスした話です。属人化を壊す第一歩は、教え方の型を作ることです。

👉 教育はOJTじゃない:「見て覚えろ」で5年ロスした話

故障記録を「分析できる形」で残す方法を整理しました。あの人の頭の中にしかない知見を外に出す具体的な型です。

👉 Excelの故障記録を”分析できる形”に変える


最後に

「あの人がいないと回らない」は、あの人が優秀だという話ではありません。

チームの仕組みが足りていない、という話です。

そして、あの人が一番先に潰れる構造を放置してはいけません。

あの人を守るためにも、属人化を壊す。

あの人を基準にしたチーム設計をやめる。

70%できる人をもう1人育てる。記録を外に出す。手順を書く。

全部を一気にやる必要はありません。1つずつでいいです。

ご安全に 👷‍♂️⚡

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