ご安全に!まんぬです👷♂️⚡
今回から、電気トラブルの一部を「失敗事例DB」シリーズを不定期で書きます。
それに伴い、今まで電気トラブルとして公開していた記事の一部をこのシリーズに追加します。
現場の保全で実際に起きた「悩まされた故障」を、原因と解決の過程まで含めて公開していくシリーズです。
教科書には載らないけど、現場でハマる典型例を集めていきます。
コンセプトは「誰かの1週間を救う」。
ワイが1週間以上悩んだ事例が、この記事を読んだ人の5分で解決できれば、それだけでこのシリーズの価値があります。
さて、今回の事例は
「PC内蔵タイプのハンディ測定器が、立ち上げから動作不良。原因はアース未接続だった」
という話です。
立ち上げ初日から、測定が遅い
新規導入したハンディ測定器がありました。
Windows OSが内蔵されているタイプの測定器です。
予算取って、上の承認もらって、ようやく現場に届いた機器。
据え付けが終わって、さっそく試運転です。
手動で測定する分には、まぁ動く。遅いけど、動く。
「まぁ立ち上げ直後はこんなもんか」と思っていました。
問題は自動測定モードにしたときです。
測定が始まったと思ったら、画面がほぼ固まる。
数秒に1回だけカクッと進む。
自動測定なのに、手動より遅いってどういうことですか🙃
ワイ「えっ……なにこれ……」
画面「……(固まってる)」
ワイ「動け」
画面「……カクッ」
ワイ「遅ッッッ」
カタログスペック上は、この程度の測定なら問題なくサクサク動くはず。
メーカーのデモ動画ではちゃんと動いてる。
なのに、ワイの現場では動かない。
「これ、初期不良じゃね?」
導入初日でいきなりこの感想が出てくる時点で、先行きが暗すぎます😇
しかもこの測定器、安くないんです。単体で〇百万円、案件全体で1本超えます。
新規導入で予算を確保して、上の決裁を通して、ようやく現場に届いた。
初日に「あれ、動かないな」って、ちょっと血の気引きますよ。
上に「動いてる?」って聞かれて「……まぁ、一応……」って答えたワイの顔、たぶん引きつってました。
試行錯誤:何を疑い、何を試したか
まず最初にやったこと。メーカーに問い合わせました。
メーカーの回答:「他のお客様では問題なく動作しています」。
出たよこのセリフ!!!!
この仕事やってると一生のうち何回聞くんですかね、「他のお客様では問題なく」
ワイの現場で問題なのが問題なんだよ、という気持ちをグッと飲み込みつつ、自力調査に入ります。
電源を疑いました。
別のコンセントから給電してみる。
変化なし。
電圧は100Vきっちり出てる。問題なし。
ソフトを疑いました。
再起動。変化なし。
初期化。変化なし。
OSのアップデートを確認。最新。
もう一回再起動。変化なし。
再起動何回やんの???
ケーブル類を疑いました。
付属の接続ケーブルを全部交換してみる。変化なし。
USBポートを差し替える。変化なし。
CPUやメモリの負荷を疑いました。
タスクマネージャーを開いてみる。 CPU使用率は高くない。メモリも余裕がある。 ディスクアクセスも異常な値ではない。
ソフト的に異常がない。ハード的にも異常が見当たらない。でも遅い。
「原因が分からないのに症状だけがある」
保全やってて一番つらいやつです😨
メーカーに追加で問い合わせると、「現地で確認が必要かもしれません」との回答。
ただし、メーカーの技術者が来るまでに数週間かかると。
数週間!!!!
ここで1週間ほどが経過。
「もう初期不良で交換してもらうしかないか」と半ば諦めかけていました。
できることは全部やった(と思っていた)。
電源、ソフト、ケーブル、ハード。全部確認した(と思っていた)。
ワイ、完全にお手上げです😇
保全担当の1週間ってタダじゃないです。
他の業務を後回しにしながら、この調査に時間を割いている。
その間にも通常の保全業務は溜まっていく。
「新しい測定器の調査」が、ワイのリソースを圧迫していました。
偶然の発見:アルミカバーが本体に触れた瞬間
ある日、機器を分解して中を見ようとしていました。
もう外から確認できることはないから、中の基板とか配線を確認するしかない、という判断です。
アルミ製のカバーを外すために、片手で本体ケースを押さえて、もう片方の手でカバーを引っ張っていました。
そのとき。
外したカバーが、たまたま本体の金属ケースに触れた瞬間。 画面の動きが、急に滑らかになったんです。
「……えっ?」
カバーを離す。また遅くなる。
もう一回触れさせる。早くなる。
ちょwwwなにこれwwwwww
いやちょっと待て。もう一回。
触れる。早い。
離す。遅い。
触れる。早い。
触れる位置を変えながら何度か試しました。
金属同士が接触するポイントであれば、確実に再現する。
離せば遅くなる。触れれば早くなる。 100%再現しました。
K I T A K O R E☆
と直感しました。
ただし、この時点では原因の見当が全くついていません。
「金属を触れさせると動作が変わる」という現象だけが確認できた状態です。
いや、何が起きてるかは分からないけど、1週間で一番の進展であることだけは間違いないです。
この「謎の再現性」に、変な興奮を覚えていました。
工事業者の一言:「アース、落ちてないんじゃない?」
ちょうどそのとき、別件で現場に来ていた仲の良い工事業者のおっちゃんがいました。
ワイの工場の保全担当ではなく、別の作業で来ていた人です。
たまたま通りかかっただけ。
ワイが「カバーを触ると動作が早くなるんですよね……」
と困惑しながら見せていたら、工事業者がさらっと一言。
「これ、アース落ちてないんじゃない?」
その瞬間、全部繋がりました。
アルミカバーが本体ケースに触れたとき、
カバー経由で金属が接触してアース経路ができていた。
だから動作が正常になっていた。
試しに、本体筐体にアース線を1本繋いでみました。
動作が完全に正常化しました。
1週間以上悩んだ問題が、アース線1本で解決しました。
アース線1本。
1本ですよ😇
おっちゃんは「他の現場でもこういうのたまにあるんすよw」とだけ言って、次の作業に戻っていきました。
ワイはしばらく呆然としていました。
電源を疑い、ソフトを疑い、ケーブルを疑い、CPUを疑い、メモリを疑い、メーカーに問い合わせ、1週間以上かけて・・・
結論はアース線1本。
しかも答えを出したのは、自分の専門でも同じ職場の人間でもなく、たまたま通りかかった工事業者のおっちゃん。
自分の領域だけで考えていると、盲点に気づけないんです。
ワイはこのとき、それを身をもって学びました。
あのおっちゃんにとっては「よくある話」。
ワイにとっては「1週間の全力調査」。
この差です。専門が違うと、景色がまるで違う😇
なぜアースで解決したのか──技術的な解説
ここからは技術的な解説です。
なぜアースの有無が、PC内蔵機器の動作速度に影響するのかを整理します。
PC内蔵タイプの測定器は、内部にCPU・メモリ・ストレージといった電子部品が高密度で実装されています。
これらの電子部品は動作中に微弱な電磁ノイズを発生させます。
通常、このノイズは金属筐体を通じてアースに逃がされます。
筐体がアースに接続されていれば、ノイズは大地に流れて消えます。
しかしアースが接続されていない場合、ノイズの逃げ場がありません。
行き場を失ったノイズが筐体内部に蓄積し、内部回路に逆流します。
逆流したノイズは、CPUやメモリの信号線に干渉します。
デジタル回路は「0」と「1」の電圧レベルで動作していますが、ノイズが信号線に乗ると、この判定が不安定になります。
結果として、データの読み取りエラーや通信のリトライが頻発します。
特にWindows OSのようなソフトウェア層が乗っている機器では、ノイズの影響がさらに複雑になります。
ハードウェアレベルのエラーをOS側がエラー検出・再試行で処理しようとするため、見かけ上「処理が重い」「フリーズしたように見える」状態が発生します。
タスクマネージャーで見てもCPU使用率やメモリ使用率は正常に見える場合が多いです。
OS内部のI/Oやシステムコールがリトライを繰り返す形で遅延するため、表面的なリソース使用率には表れにくいのです。
ハンディタイプの測定器は、本来は電池駆動で使用する場合が多く、絶縁構造を前提としているケースがあります。
しかし、AC電源を使用する場合や金属筐体の機器では、アース接続が必須に近くなります。
AC電源のライン上に乗るノイズが筐体に伝わる経路ができるためです。
ただし、メーカーのマニュアルには「アースは必要に応じて接続してください」程度しか書かれていないことが多いです。
「必要に応じて」という表現は、読み手に判断を委ねる記述です。
今回のケースでは、AC電源使用・金属筐体・PC内蔵という条件が揃っていたため、アース接続は事実上必須でした。
しかし、マニュアルの記述からその判断に至ることは容易ではありませんでした。
これはワイの現場だけの特殊な事例ではありません。
計装機器やPC内蔵型の電子機器では、アース不良による動作異常はしばしば発生する問題です。
電源品質・ケーブル・ソフトウェアに問題がないのに動作が不安定な場合、アースを確認する価値は十分にあります。
この事例から持ち帰る教訓
この事例から、3つの教訓を持ち帰ってください。
教訓1:PC内蔵機器の動作不良は、まずアースを疑う
電源、通信、ソフトウェアを疑う前に、まずアースが落ちているか確認する。
確認にかかる時間は5分です。
テスターでアース端子と筐体の導通を見る。
アース線が確実に接地極に繋がっているか確認する。
5分の確認で、1週間の調査を回避できる可能性があります。
「カバーを触ったら動作が変わる」
「金属に触れると挙動が変わる」
という現象が出たら、ほぼアースが原因です。
覚えておいて損はないです。
教訓2:自分の専門領域の外に、答えがある場合がある
今回の事例では、計装担当であるワイがいくら考えても出てこない答えを、工事業者がさらっと出しました。
専門が違うから見える景色が違う。
自分の専門知識だけで詰まったら、他の職種の人に聞くのが最短です。
電気工事士、工事業者、設計担当、場合によってはオペレーター。
自分が「常識」だと思っていることの外側に、答えがあるかもしれません。
プライドを捨てて聞く。
これが一番コスパのいい問題解決です。
1週間の調査時間と、聞くのに必要な30秒。どっちが安いかは明白です。
教訓3:「必要に応じて」は思考停止のサイン
メーカーマニュアルの「必要に応じて」を、自分で判断する基準を持っておく。
今回のケースで言えば、以下の3条件が揃ったらアースは必須と判断して良いです。
① 金属筐体である
② AC電源で使用する
③ PC・マイコンが内蔵されている
全部当てはまるなら、マニュアルに何と書いてあろうとアースは接続する。
「必要に応じて」を「不要」と読んでしまうと、ワイと同じ1週間が待っています🙃
逆に言えば、この3条件を知っていれば「必要に応じて」を自分で判断できるようになります。
マニュアルの曖昧な記述に頼らず、自分の基準で決める。
現場の判断力とはそういうものだと、ワイはこの件で学びました。
失敗事例DBシリーズ、始めます
この記事から「失敗事例DB」シリーズを始めます。
現場の保全で実際に起きた「悩まされた故障」を、原因と解決の過程まで含めて公開していくシリーズです。
教科書には載らないけど、現場でハマる典型例。
しかもワイが実際にハマった事例だけを書きます。
構成はこの記事と同じ流れでいきます。
エピソード → 試行錯誤 → 発見 → 技術解説 → 教訓。
「何が起きて、何を試して、どう解決したか」を全部書く。
不定期更新、思い出した順に書いていきます。
共感できた事例があれば、Xで「あるある」のリプライ残してくれると喜びます。
「ウチでも同じことあった」系の事例も大歓迎です。
誰かの1週間を救えるなら、ワイの1週間も無駄じゃなかったと思えるので🔧
次に読む記事
接地(アース)の基本と現場で起きる事故のパターンはこちらで整理しています。
👉接地は規格より”現場の事故”で覚える
故障記録を「武器」に変える考え方はこちら。失敗事例も記録に残してこそ価値が出ます。
👉故障記録は”未来の稟議書”──記録が予算を動かす
このブログでは、工場の電気保全の実務に使えるノウハウを発信しています。
設備リスクを金額で整理して予算判断に使えるExcelテンプレートも公開中です。
👉note
👉設備リスク金額化Excel
X(@itsumimario)でも現場ネタを発信しています。
失敗事例DBシリーズ、次の事例も書いていきます。
フォローしてお待ちください🙏


コメント