ブレーキ故障が3台続いたラインの原因は、メーカー設計のブレーキ電源電圧だった

⚡電気トラブル⚡

ご安全に!まんぬです👷‍♂️⚡

ブレーキが壊れた。
交換した。
また壊れた。
今度は別のモーターのブレーキも壊れた。

なんなん!??????????

1台なら個体不良の可能性があります。

しかし3台以上で同じ故障が続いたら、それは個体の問題じゃないです。

設備に共通する「何か」がおかしい。

今回、その「何か」はブレーキ電源の電圧でした。

起きたこと:同じラインでブレーキ故障が続いた

ワイが経験した実例です。

あるラインで、モーターのブレーキ故障が続きました。コイル焼損とブレーキ焼き付き。

ブレーキ本体を交換して復旧しても、しばらくすると別のモーターで同じ故障が起きる。

これが3台以上で発生しました。 モグラたたきかよって🔨

「交換しても直らない」ではなく「交換しても別の場所で再発する」パターンです。

しばらく原因が分からなくて、正直かなり困りました。

ブレーキ本体を交換するたびに「今度こそ大丈夫だろう」と思うわけです。

で、別のモーターでまた焼ける。

交換1回で数時間かかります。

ちょwwwもう勘弁してくれwwwwww

困るのが、上への報告です。

「ブレーキ故障です」「交換しました」「また壊れました」を3回繰り返すわけですから。
またかよって顔をされます😇

1台目は「まあ個体不良かな」で済ませられます。
2台目で「ん?」となる。
3台目で「これ、個体の問題じゃないな」と確信しました。

原因:ブレーキ電源の電圧が高すぎた

調べていくと、原因はブレーキ電源の電圧でした。

このラインのブレーキ電源はDC180V。 メーカーが選定した値です。

しかし結果的に、この電圧が実際の使用条件に対して高すぎました。

DC180VからDC90Vに変更したところ、ブレーキ故障はピタリと止まったのです。
※弱励磁は90Vから45Vに。

「メーカー設計」

この言葉、安心材料にはなりますが、免罪符にはなりません。

メーカーが設計時に想定した使用条件(デューティサイクル・環境温度など)と、
実際の使用条件が合っていなければ、設計通りでも壊れます。 

No.23のインバータの過負荷トリップと同じ構造です。
あちらはV/f設定が使用条件と合っていなかった。
今回は電圧が使用条件と合っていなかった。

「メーカー設計通りだから大丈夫」は、思考停止のサインです😇

なぜ電圧が高いとブレーキが壊れるのか

ここから技術的な解説です。 「電圧が高いと壊れる」の中身を、もう少し掘ります。

コイルの発熱メカニズム

ブレーキにはコイルが入っています。
コイルに電圧をかけると電流が流れる。
電流が流れると、コイルの抵抗によって熱が発生します。
これがジュール熱です。

ここで重要な式が1つあります。

コイルの消費電力 P = V²/R

「なんで2乗?」と思った方向けに補足します。
オームの法則で電流 I = V/R です。
消費電力 P = V × I なので、ここにI = V/Rを代入すると P = V × V/R = V²/R。
つまり電圧が上がると、電流も連動して上がるので、電力は電圧の2乗で効いてくるわけです。

コイルの抵抗R(オーム)が一定なら、消費電力(=発熱量)は電圧Vの2乗に比例します。
電圧が2倍になると、発熱は2²=4倍です。

DC180VとDC90Vでは電圧が2倍違います。
理論上、DC180VはDC90Vに比べて4倍の発熱量です。

4倍ですよ、4倍。
DC90Vのブレーキが「ちょっと温かいな」レベルだとしたら、DC180Vは「いや熱すぎるだろ」レベルです。
そりゃ焼けるわ🔥

ただし「理論上」と断っておきます。
実際には放熱条件やデューティサイクル(ON/OFFの頻度)も影響するので、単純に4倍の熱が溜まるわけではありません。
しかし、電圧の差が発熱に与える影響が非常に大きいことは間違いないです。

「ちょっと高い」でも寿命は激減する

富士電機の技術資料より、参考データを1つ紹介します。(ソースは自分で調べて💛)

印加電圧が定格より5%高くなるだけで、コイルの熱的耐久性は50%低下します。
たった5%で寿命が半分です。

5%で寿命半分ですよ???
DC180VとDC90Vの差は2倍、つまり100%増。
5%で半分になるものが100%増したらどうなるか、想像してみてください😨

コイル焼損の流れ

発熱が増えると何が起きるか、順を追って説明します。

① 発熱が増える
② コイルの巻線を覆っている絶縁被覆が熱で劣化する
③ 隣り合った巻線同士の絶縁が破れて短絡する(これを「レアショート」=層間短絡と呼びます)
④ 短絡した部分に電流が集中してさらに発熱が増大する
⑤ 最終的にコイルが焼損する

レアショートをかみ砕くと、
「コイルの巻線を覆っている絶縁被覆が熱で溶けて、隣り合った線同士がくっついて短絡する現象」
です。

この劣化は段階的に進みます。
最初は動作に問題なくても、絶縁が徐々にやられて、ある日突然焼ける。
「昨日まで動いてたのに」って思っていても、絶縁被覆はずっと悲鳴を上げていたわけです。

コイル「もう限界です😇」
ワイ「昨日まで元気だったじゃん!!!!肝臓かよ!!!!

人間もコイルも、限界のサインは本人が倒れる前には見えにくいです。
だからこそ、温度の記録が大事になります(後述)。

ブレーキ焼き付きのメカニズム

コイル焼損だけではありません。
ブレーキ焼き付きも、電圧が高すぎることが起点です。

ブレーキコイルに過大な電圧がかかると、コイルの吸引力が過大になります。

吸引力が過大 → ブレーキディスクへの押し付け力が強すぎる → 摩擦面の発熱が過大 → 焼き付き
なんてことがあります。

コイル焼損とブレーキ焼き付き。
故障モードは違いますが、どちらも「電圧が高すぎる」が起点です。

真実はいt・・・原因は1つ、壊れ方が2つ。シンプルです。

再発防止と教訓

再発防止策

① 同系統設備のブレーキ電源電圧を確認する(横展開)
同じラインだけでなく、同じ仕様で設計された他ラインも確認します。
1台直して安心しない。
同じ設計の設備は全部対象です。

② 正常時のブレーキ温度を記録しておく
異常時にいつもより熱いと判断するには、いつもの温度を知っている必要があります。
比較基準がなければ「熱い気がする…けど前からかも?」で終わります。
一番困るやつです😇

③ 同じ故障が2台以上で発生したら、個体ではなく共通原因を疑う手順を入れる
運が悪いで片付けない。
2台目が出た時点で「共通原因があるのでは」と立ち止まるルールを作ります。

④ メーカー設計通りでも、実際の使用条件と合っているか検証する
メーカーが想定した条件(環境温度・デューティサイクル・設置条件など)と、実際の条件を突き合わせる。
合っていなければ、設計値を鵜呑みにしない。
「メーカーが言ってるから」は上司への説明には使えても、設備は納得してくれません。

教訓

「メーカー設計通り」は安心材料にはなります。
でも免罪符にはなりません。

メーカーが想定した条件と実際の条件が違えば、設計通りでも壊れます。 
No.23のインバータのV/f設定と同じです。
「仕様通りだから大丈夫」ではなく「実運用条件と合っているか」を見る。

そして、同じ故障が複数台で続いたら「運が悪い」ではなく「共通原因がある」と考える。 
No.24の「原因不明を放置しない」で書いた分類Aの「見る場所が違った」パターン、まさにこれです。
個体を見ていたら、共通原因にたどり着けなかった。

1台の故障は個体不良かもしれない。
3台以上は共通原因。
そう疑っても損はないです💡

次に読む記事

「仕様通り」が原因だったインバータのトリップ事例はこちら。
👉インバータが過負荷で止まる:設定を疑う前に確認すべきV/fと基底周波数の話

「原因不明」を放置せず、分類して次の一手を決める考え方はこちら。
👉 「原因不明」を放置しない:分類して次の一手を決める


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