ご安全に!まんぬです!👷♂️⚡
今回のテーマは、インバータのToLOVEるです。

はーかわい。ふぅ。。。
・・・さて、インバータが過負荷で止まったとき、まず疑うのは「負荷が重すぎるんじゃないか?」あたりですよね。
ポンプが固着してるとか、ベアリングが終わってるとか。
一方で、負荷は完全に正常なのに過負荷で止まるパターンがあります。
その原因はインバータの設定
──具体的には基底周波数と実運転条件のズレ、という場合があります。
今回は、ワイが実際に遭遇した事例を定量データ付きで解説します。
「負荷を疑う前に、V/f設定を確認しろ」という話です。
実例:50Hz運転なのに68A流れて止まった話
ある日、インバータ駆動のポンプが過負荷で停止しました。
インバータは三菱 FR-A800系。モータ定格は200V、定格電流61A。電子サーマル(インバータ内蔵の過負荷保護機能)の設定も61Aです。
見に行って運転データを確認したら、こうでした👇
・運転周波数:50Hz
・電流:68A(定格61A超過)
・電圧表示:約140V

50Hzで回してるだけなのに、定格61Aを7Aも超えてます。 そりゃ電子サーマルが動作して止まりますよね。
負荷側を確認しましたが、ポンプの回転は正常。機械的な固着もなし。 じゃあ何が原因か。
パラメータを見に行ったら、Pr.3(基底周波数)が60Hzに設定されてました。
基底周波数とは、インバータが「この周波数で定格電圧(200V)を出し切る」と決めている値です。
つまり60Hz設定だと、60Hzで200Vを出す前提でV/f直線が引かれます。
50Hzで運転してるのに、60Hz用の電圧の出し方をしてた。
モーターからしたら、「電圧足りないんですけど…?でもトルクは出さなきゃ…!→ 電流で補う → 過労」という状態です。
モーターさん、磁束足りなくて電流で補ってたんか…完全に過労です😇
基底周波数を50Hzに変更したところ、電流は約50Aまで低下。
→定格61Aの範囲内に収まり、過負荷停止は解消しました。
設定ミスというよりも、基底周波数と実運転条件の不整合が原因だったわけです。 パラメータ1個で18Aも変わるの、怖くないですか???
なぜ電流が増えたか:V/fと磁束の関係
ここが技術的な核心です。 ちょっと重めの内容ですが、数字で追えば分かります。
V/f制御の基本
インバータは、モータに与える電圧(V)と周波数(f)の比率を一定に保つことで運転します。 この比率「V/f」を一定にすると、モータ内部の磁束(磁力の密度みたいなもの)が適正に維持されます。
磁束が適正 → 必要なトルクが出る → 電流も適正範囲。 これがV/f制御の基本です。
要するに「V/fという比率が、モータの体調管理の指標」みたいなものです。 この比率が崩れると、モータが無理をし始めます🏥
基底周波数60Hzのとき、50Hz運転で何が起きるか
定量的に比較します。
🔴 変更前(基底周波数 60Hz)
・V/fの基準:200V ÷ 60Hz = 3.33 V/Hz
・50Hz時の理論電圧:3.33 × 50 = 約167V
・実際の電圧表示:140V
・実質V/f:140 ÷ 50 = 2.80 V/Hz
・理論値に対して約16%低い状態
🟢 変更後(基底周波数 50Hz)
・V/fの基準:200V ÷ 50Hz = 4.00 V/Hz
・50Hz時に200Vがフルに出る
・同じ50Hz運転でも、より適正な磁束条件になる
V/fが2.80 V/Hzから4.00 V/Hzに変わった
──つまり、V/f直線の「傾き」が急になったイメージです。
同じ50Hzでも、出力される電圧が上がるので磁束条件が改善されます。
2.80 V/Hzと4.00 V/Hz、数字で見ると「まあそこそこ違うね」くらいに見えますが、結果は68Aと50Aの差です。
電気って正直ですね。人間は嘘つくけど。
なぜV/fが低いと電流が増えるのか
誘導電動機は、V/fが低下すると磁束が不足します。
磁束が不足すると、モータは必要なトルクを出すために電流を増やして補おうとします。
「磁力が足りないなら、電流で力ずくでトルクを出す」という動き方です。
人間で例えると、坂道を自転車で登るときにギアが合ってないと脚の回転数(電流)が爆増するのと同じです。
ギア(V/f)が適正なら楽に登れるのに、合ってないと全力でペダルを回す羽目になる。
モーター「磁束ください」
インバータ「(60Hz設定のまま)はい167V」
モーター「足りないけど回るしかないので電流で補います…ハァハァ」
電子サーマル「あんたばかぁ!?68Aよ!止まりなさい!!」
今回のケースを因果関係で整理するとこうなります👇
・V/f不足(実質2.80 V/Hz) → 磁束不足
・磁束不足 → トルク不足を電流で補う
・電流が68Aまで上昇(定格61A超過)
・電子サーマルが動作 → 過負荷停止
基底周波数を50Hzに修正した結果
・電流:68A → 約50A
・改善率:(68 – 50) ÷ 68 ≒ 26.5%低下
26.5%も電流が下がったということは、それだけV/fのズレがモーターに無理をさせていたということです。
モーターさん、ずっと過労状態だったのに文句も言わず回ってたんですね…いや止まったか😇
誤解しやすい3つのポイント
V/fと基底周波数の話は、現場で混同されやすい概念がいくつかあります。
ワイが若手のころ盛大に混同してたものを3つ挙げます。
① 「うちは50Hzエリアだから基底周波数は50Hzにすべき」は誤り
「商用周波数」と「インバータの基底周波数」は別の概念です。
商用周波数は、電力会社から供給される交流電源の周波数です。
東日本は50Hz、西日本は60Hz。これは電力会社が決めています。
一方、インバータの基底周波数は、インバータが自分で作って出力する周波数の設計基準です。
インバータは一度交流を直流に変換し、自分で周波数を作り直して出しています。
つまり、電力会社の周波数とインバータの出力周波数は直接関係しません。
基底周波数は、接続されるモータの定格周波数に合わせて設定するものです。
「うちは東日本だから50Hz」ではなく、「このモータの定格が50Hzだから50Hz」が正しい判断基準です。
ここ、混同してる人が案外いるんです。
ワイも「東日本だから50Hzでしょ?」って平気で言ってました。恥ずかしい😨
整理します👇
・商用周波数:電力会社が供給する周波数(50Hz or 60Hz)
・モータ定格周波数:モータ銘板に記載された設計周波数
・基底周波数(Pr.3):インバータが「ここで定格電圧を出し切る」と設定する周波数
この3つ、全部違う概念です。
混同しがちですが、役割が違います。
② 「50Hzなら200V出るはず」は条件付き
「50Hzで運転すれば200V出るでしょ?」と思いがちですが、これは基底周波数が50Hzに設定されているときだけ成立する話です。
基底周波数が60Hz設定なら、50Hz時の理論電圧は200 × (50/60) = 約167V。 200Vは出ません。
V/f直線というのは、0Hzで0V → 基底周波数で定格電圧(200V)という直線です。
基底周波数が60Hzなら、200Vに到達するのは60Hz。 50Hzの時点ではまだ直線の途中です。
「50Hz=200V」と思い込んでると、電圧モニタを見て「あれ、167V?低くない?」ってなります。
低いんじゃなくて、設定通りなんです。設定が合ってないだけで🙃
③ 電圧表示は理論値と一致しないことがある
今回の事例では、基底周波数60Hz設定で50Hz運転したときの理論電圧は約167Vでした。 しかし実際のインバータの電圧表示は140Vでした。
理論値167Vと実測値140Vで約27Vの差があります。
この差は、モータ側の電圧降下や計測条件によるもので、必ずしも異常ではありません。
ただし、ここで重要なのは「電圧表示だけでトラブルの有無を判断しない」ということです。
140Vという数字だけ見ても「これが正常かどうか」は判断できません。
一方、電流値は判断の信頼性が高いです。
定格61Aに対して68A流れてるなら、それは明確に「何かおかしい」のサインです。
再発防止と、インバータが止まるその他のパターン
再発防止(今回のケース)
今回の事例から導き出される再発防止策は4つです。
① 基底周波数(Pr.3)とモータ定格周波数の整合確認
→ インバータのPr.3設定と、接続モータの銘板に記載された定格周波数が一致しているか確認する。
② 正常時電流の記録(Hz帯ごと)
→ 正常運転時の電流値を周波数帯ごとに記録しておく。異常時に「どれだけズレたか」が数字で判断できる。
③ 用語の統一
→「商用周波数」「モータ定格周波数」「基底周波数」が何か、それぞれ理解する、させる。
④ 同系統設備の設定横展開確認
→ 同じモータ・同じインバータの組み合わせが他にもあるなら、そちらも同じ設定ミスがないか確認する。
②の正常時電流の記録は地味ですが、効果がデカいです。
定格値だけだと「61A以下ならOK」としか判断できませんが、正常時に45Aと分かっていれば、55Aの時点で「おかしい」と気づけます。
④の横展開確認、面倒ですけど絶対やってください。
同じ設定ミスが別の設備でも眠ってて、半年後に同じ原因で止まるとか普通にありますので😨
インバータが止まる、他の原因パターン
今回はV/f設定の不整合が原因でしたが、インバータが止まる原因は他にもあります。
・過負荷(機械側の問題):ポンプの固着、ベアリング摩耗、潤滑油切れなど。負荷そのものが重くなっている場合 ・熱(盤内温度・放熱不足):インバータが高温で保護停止するケース ・本体の劣化:内部コンデンサの膨れ、冷却ファンの停止などによる故障
熱や本体劣化のサインについては、こちらの記事で詳しく書いています👇
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